遺言
遺言書を書いた方が良いのか
人が亡くなって相続が開始すると、遺言がなければ、民法に規定された法定相続人が法定相続分どおりに相続するか、法定相続人間で話し合って決める(遺産分割協議)ことになります。
これに対し、遺言を残すと、誰にどの割合で相続させるか指定することができますし、特定の遺産を特定の相続人に相続させたり、相続人以外の人に遺贈したり、福祉団体などに寄付したりすることもできます。
例えば銀行に預金がある場合、誰が相続するのか話し合って決めない限り、原則、相続人全員で解約・払い戻しの手続きをする必要があります。不動産についても、同居していた相続人が自動的にその不動産を相続できる訳でもありません。
様々な理由で相続人全員で手続きをしたり遺産分割協議をすることが難しい場合でも、遺言があればスムーズに相続手続きを行うことができます。
他にも、特に以下のようなケースに当てはまる方は遺言を書いておくべきです。
・事実婚である:事実婚のパートナーに相続権はありません。遺言でパートナーに財産を残すことができます。
・子供がいない:配偶者の他、兄弟姉妹(亡くなっている場合は甥・姪)が相続人となる場合があります。遺言が無ければ、兄弟姉妹や甥姪と疎遠になっていても、残された配偶者は相続人全員と連絡を取って話し合わなくてはなりません。
・前妻との間の子供がいる:前妻との間の子や婚外子にも相続権があります。遺言が無ければ、面識がなくても相続人全員で話し合う必要があります。
・身寄りがない:相続人がいない場合、原則、財産は国庫に入ります。財産を譲りたい人がいる場合は、遺言を書く必要があります。
このように、残された相続人が相続手続きで大変な思いをしないようにするためにも、財産の多寡に関わらず遺言書を書いておくべきかと思います。
遺言の方式と特徴
自筆証書遺言 遺言者が遺言書の全文、日付、氏名を自分で手書きし、押印することにより作成する遺言です。
メリット:簡単に作成できる。遺言の内容・存在を秘密にできる。
デメリット:紛失や内容改ざんの恐れがある。要件の不備により無効となる場合がある。相続開始後に家庭裁判所の検認手続が必要。
*民法改正により平成31年1月13日以降は、財産目録(不動産や預貯金などの遺産の一覧)だけは自筆でなくてもよいとされました。
*平成30年7月6日に「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が成立しました。 この法律が施行されると、自筆証書遺言を法務局で管理してもらうことが可能となる他、相続開始後の検認手続きが不要となります。施行日は令和2年7月10日です。
公正証書遺言 公正証書によって行う遺言のことをいい、公証役場で証人2人以上の立会の下、遺言書を作成します。
メリット:公証役場で原本を保管するので、偽造・変造・隠避などの恐れがない。検認手続が不要なので、相続開始後速やかに遺言の内容を実行できる。
デメリット:公証人に支払う手数料が発生する。遺言の内容・存在が証人には知られてしまう。
遺言書の方式については、法律上厳しく要件が定められており、要件を守らなければ基本的には無効となります。
また、記載の不備により不動産登記に使用できない遺言となってしまうこともありますし、内容が明確でないと、かえって争いの元になることもあります。自身の意思が確実に実現されるようにするためには、法律の知識も必要になります。
当事務所では、遺言の書き方についてのアドバイス、遺言書の文案の作成、公証人との打合せ・予約、公証役場への同行・証人としての立会、必要書類の取寄せなど、遺言作成のための手続をサポートさせていただきます。まずはお気軽にご相談ください。